いわゆる風邪の治療に抗生物質は不要であるばかりか有害と考え処方しておりません。感染症の原因は大まかに細菌とウイルスがありますが、抗生物質は「抗菌薬」とも呼ばれるように細菌に対抗するための薬です。風邪はウイルス感染症のため、抗生物質が風邪の治療に効果的とは言い難く、さらに下痢やアレルギーなどの副作用の問題もあります。例外はありますが、見極めのポイントとなる考え方の根拠は、ウイルスは増殖範囲が広く、細菌は限局した範囲で増殖することです。ウイルス性の風邪は大抵の場合咳・ハナ・のどの症状が同時期に出始めます。のどだけがとても痛くまっ赤だったり、ハナは出ないのに咳と熱だけといった場合には細菌性の病気を考えるきっかけになります。
風邪の治療には鼻水の吸引が有効で、特に自分で鼻をかめない乳幼児に効果を発揮し中耳炎の予防にもなります。鼻水を止める薬はかえって粘っこくなり出にくくなるので処方せず、「出して治す」方針です。咳止めも同様で、咳は異物の排除反応といわれており、無理に抑えるとかえって痰の出が悪くなるおそれがあります。欧米のガイドラインでは鼻水や咳を止める薬は小児には推奨されていません。